日々の歯磨きはむし歯予防の基本であり、子どもにとって歯の健康を守るための重要な習慣です。この記事では、子どもの歯磨きについての基礎知識と、親子で取り組める具体的な方法についてご紹介します。
子どもの歯磨きの重要性
乳歯は一時的な歯ですが、健康な永久歯を育てるための基盤となります。乳歯が虫歯になると、その影響が次に生える永久歯にも及ぶことがあります。
子どもの歯磨きは、ただむし歯を予防するだけでなく、以下のようなメリットがあります。
- 歯列不正の予防につながる可能性がある。
- 歯周病予防につながる可能性がある。
- 口の中を清潔に保つことで全身の健康をサポートする。
早い段階での正しい歯磨きの確立が、子どもの将来のお口の健康に大きく貢献します。
子どもの歯磨きのタイミングとポイント
1日2回の歯磨きを習慣化
基本的には朝食後と寝る前の1日2回の歯磨きを推奨します。特に寝る前の歯磨きは、むし歯予防において非常に重要です。睡眠中は唾液の分泌が減り、むし歯のリスクが高まるため、しっかりとケアを行いましょう。
仕上げ磨きを忘れずに
子どもは自分で上手に歯を磨くことが難しいため、大人による仕上げ磨きが必要です。特に歯と歯の間や奥歯など、磨き残しが多い部分を意識して丁寧に磨いてあげましょう。
よく「いつまで仕上げ磨きが必要ですか?」という質問を頂きますが、少なくとも小学校3〜4年生ぐらいまではしてあげましょう。
また仕上げ磨きの際は子どもが立ったままでは磨き残しが多い傾向がある上に危険なため、必ず子どもを横に寝かせ仰向けの状態で磨きましょう。
年齢に応じた歯磨きの工夫
0〜2歳
歯が生え始めたら歯磨きのスタートです。
柔らかいガーゼや赤ちゃん用歯ブラシで優しく歯を拭いたり磨いたりする習慣をつけましょう。
歯磨き習慣を楽しいものにするために、歌を歌ったり、歯磨き用のおもちゃを使うのも効果的です。
3〜5歳
この時期にむし歯の種となるむし歯予備軍を作らないことが重要です。子どもは自分で歯磨きをやりたがる時期ですが自主性を尊重し褒めてやり時間を与えてあげましょう。それとは別に必ず仕上げ磨きを行い一日一回は磨いていない箇所がないように隅々まで磨きましょう。
6〜7歳
6歳臼歯と呼ばれる奥歯の永久歯がこれまであった乳歯の奥に歯茎を突き破り生えてきます。この歯は一生の内で最も重要で一番長く使っていきたい歯です。
生えたての永久歯の表面は弱くむし歯になりやすいため、この歯が生えてきたら今まで磨いていたより更にもう一本奥までしっかり磨きましょう。
学童期
乳歯と永久歯が混在する時期(混合歯列期)です。歯並びも安定していないため歯の位置関係に連続性がなく歯ブラシが当たりにくい箇所が時期により変化していきます。
歯医者さんでお口の状態に合った歯ブラシや磨き方を教わり、子ども自身の歯磨き能力を高めていきましょう。
楽しく続けるための工夫
お気に入りの歯ブラシや歯磨き粉を選ぶ
好きなキャラクターがデザインされた歯ブラシの使用、歯ブラシにシールを貼る、お気に入りの歯磨き粉を使うなど、こうする事により歯磨きへの興味が湧きやすくなります。
タイマーやアプリを活用する
歯磨き専用のタイマーやアプリを使い、ゲーム感覚で歯磨きを楽しむことができます。
親子で一緒に歯磨きする
おウチの方自身の歯磨きをしている姿を毎日見せることで、子どもも自然と歯磨きを習慣化しやすくなります。
当たり前のようですが、これはかなり重要です。
フッ素の活用と歯科検診
フッ素を上手に活用する
フッ素は歯のエナメル質を強化し、むし歯を予防する効果があります。フッ素入りの歯磨き粉を使用するほか、フッ素洗口液の使用等があります。
ただし、推奨されるフッ素の用法用量は年齢によって異なるため、使用方法については歯医者さんに相談しましょう。
定期的な歯科検診を受ける
むし歯の早期発見や予防には、歯医者さんでの定期検診が欠かせません。歯科医師や歯科衛生士から正しい歯磨き方法を指導してもらうこともできます。子どもが小さいうちから歯医者に通う習慣をつけることで、歯科受診への恐怖心が軽減されます。
歯磨きで気をつけるポイント
強く磨きすぎないこと
やさしく、短いストロークで磨くようにしましょう。
歯ブラシの交換を定期的に行う
歯ブラシの毛先が開いてしまっては清掃効果が低下してしまいます。最低でも1カ月に1度の交換をお勧めしますが、それより短期間でも毛先が広がればこまめに交換しましょう。
また、歯ブラシを子ども自身が磨く用と大人が使う仕上げ磨き用とを分けておくと長持ちします。
磨き残しを防ぐための工夫
よく残る場所は歯と歯の間、上の奥歯は頬っぺた側の面、下の奥歯はベロ側の面です。たまには磨き残しを確認する染め出し剤を使ってチェックするのも効果的です。
実際、磨き残しは大人も子どもも染め出し剤で視認化しなればわからないものです。
デンタルフロス(糸ようじ)の使用
子どものむし歯の多くは歯と歯の間からです。一日一回、デンタルフロス(糸ようじ)を通すだけでむし歯のリスクを大きく下げられます。習慣化してないご家庭では面倒に感じるかもしれませんが、習慣化してみると案外そんなに大変なことではないということを実感してもらえるかと思います。
それでも面倒であれば朝晩どちらかの歯ブラシを使う時間を減らしてでもフロスはやるべきです。
とにかく一日の中で歯ブラシ・フロスを当てた箇所を合計してみて、磨いていない所は無いようにすることが重要です。
さいごに
「子どもが仕上げ磨きを嫌がって磨かせてくれずどうすれば良いですか?」という質問を多く受けますが、最初からずっと嫌がらずに仕上げ磨きをさせてくれる子なんてまずいません。大切なのは習慣化すること。嫌がっても怒鳴りつけたり乱暴に扱ったりしない限り、保護者が行う分にはトラウマになることはありません。その子のことを思い、子どもの未来の健康のために根気強く毎日向き合っていればいつか必ず磨かせてくれるようになるでしょう。
歯磨きが不十分な時期などは、前回のコラム「子どものむし歯予防方法」にも書いてある間食方法やフッ化物の応用等の歯磨き以外の対策を特に気をつけられると良いでしょう。
当院では、子どもの歯磨きに関するご相談や指導も行っております。気になることがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。